
近年、高級ブランド市場では中古流通の拡大とともに偽物問題が深刻化しています。特にルイ・ヴィトンやエルメス、シャネルなど人気ブランドでは、一見しただけでは判別できないほど精巧なコピー品も増加しています。
そこで注目を集めているのが、膨大なデータを学習したAIによる真贋鑑定システムです。本記事では実際のブランド買取現場を例に、AI鑑定がどのように本物と偽物を見分けているのか、その実力と可能性を詳しく見ていきます。
コピー商品の流入は過去最多レベルへ

ブランドバッグや財布、アクセサリーなど、高級ブランド市場には現在も大量のコピー商品が流入しています。
その多くは海外から持ち込まれた模倣品であり、税関による摘発件数も年々増加傾向にあります。

報道によると、東京税関が押収したコピー商品の数量は約21万点を超え、過去最多水準となりました。

特に近年は製造技術の向上によって、従来のような粗悪な偽物だけではなく、専門家でも慎重な確認が必要になるレベルのコピー品が流通しています。

購入者だけでなく、ブランド買取店やリユース事業者にとっても真贋判定の難易度は年々高まっているのが現状です。
注目されるAI真贋鑑定とは?

こうした背景の中で急速に導入が進んでいるのが、人工知能(AI)を活用した真贋鑑定システムです。
従来の鑑定では経験豊富な鑑定士の知識や経験が大きな役割を果たしていました。しかし現在は、それに加えてAIが膨大な正規品データを照合し、判定をサポートする時代へと移行しつつあります。

果たしてAIはどこまで正確に本物と偽物を見抜くことができるのでしょうか。
大手ブランド買取店で行われているAI鑑定の現場

今回取材されたのは、全国に多数の店舗を展開するブランドリユース大手「KOMEHYO」。

店舗の買取カウンターでは、経験豊富な鑑定士とAIシステムが連携しながら査定を行っています。

この日来店したのは30代の女性。自宅で保管していたルイ・ヴィトンのバッグを査定に持ち込みました。

まずは鑑定士がバッグ全体の状態や使用状況、付属品の有無などを確認します。
実際の査定現場では価格だけでなく、「本物なのかどうか」を気にする利用者も少なくありません。特に家族から譲り受けたブランド品や、長期間保管していたアイテムの場合、その傾向はより強くなります。

そこで活用されるのがAI鑑定です。専用のマイクロスコープを使用し、革の表面や縫製部分を高倍率で撮影します。

肉眼では見落としてしまうような微細な特徴も、AIは画像データとして正確に分析していきます。


さらに刻印や縫製、素材の特徴など複数のポイントを正規品データベースと照合し、短時間で判定結果を導き出します。
近年のブランド市場では「本物らしく見える偽物」が急増しています。購入時だけでなく、中古売却時や資産価値を確認したい場面でも、AI真贋鑑定は重要な役割を果たし始めています。
AIはどこを見て偽物と判断するのか?
ブランド品の真贋判定で最も難しいのは、一見すると正規品と区別がつかない高品質なコピー品の存在です。
今回の検証では、過去に買取後の再確認で偽物と判明したルイ・ヴィトンのバッグを用いて、AI鑑定システムがどのように異常を検出するのかが紹介されました。

AIによる判定結果は「基準外」。
一般ユーザーには違いがほとんど分からないレベルであっても、学習済みデータとの比較によって異常箇所を検出できるのがAI鑑定の大きな特徴です。
縫製パターンのわずかな違和感

バッグ内部を拡大して比較すると、縫い目の間隔や糸の入り方に微妙な差異が確認されました。
人間の目では「何となく違うように見える」という感覚的なレベルでも、AIは過去の正規品データと照合しながら数値化して分析します。
そのため、経験豊富な鑑定士でも判断が難しいケースにおいて補助ツールとして高い効果を発揮します。
刻印のわずかなズレも検出


さらにAIが異常を検知したのがブランド刻印部分でした。
ルイ・ヴィトンのロゴに含まれるアルファベットの形状や傾きは、真贋判定で重要な確認ポイントとして知られています。

今回のケースでは「L」の文字にわずかな傾きが確認されました。
こうした差異は肉眼では気付きにくいものの、AIはフォント形状や文字間隔、刻印の深さなど複数要素を同時に解析し、本物との違いを抽出しています。
真贋チェックのポイント
| 確認箇所 | AIが分析する要素 |
|---|---|
| 刻印 | 文字形状・傾き・深さ・間隔 |
| 縫製 | 縫い幅・糸密度・パターン |
| 素材表面 | 革目・質感・加工状態 |
| 内部構造 | 配置・接着・仕上げ精度 |
さらに精巧なコピー品も増加している

しかし近年の市場では、こうした刻印のズレだけでは判断できないレベルのコピー品も確認されています。
以前であればロゴやフォントの違和感から比較的容易に見分けられたものの、現在は細部まで再現された高品質な模倣品が流通しているためです。

実際に本物と比較しても、その差を瞬時に見抜くことは容易ではありません。

マイクロスコープで拡大しても違いが分からないケースがある一方で、AIは画像データとして比較し、複数の異常ポイントを検出することが可能です。

鑑定担当者も、コピー品の品質向上に伴いAI活用の必要性が高まっていると説明しています。
特に中古ブランド市場が活発な現在、査定スピードと判定精度の両立は事業者にとって大きな課題となっています。
個人でも真贋確認を依頼できる時代へ

現在では一部の事業者において、買取査定だけでなく真贋確認のみの相談にも対応しています。
フリマアプリやオークションサイトで購入した商品、譲り受けたブランドバッグ、長期間保管していたコレクションなど、本物かどうか不安を感じる場面は少なくありません。

AI鑑定の普及によって、こうした不安を解消する選択肢は今後さらに広がっていくでしょう。
ブランドバッグの真贋判定は「ロゴを見るだけ」の時代ではありません。縫製、刻印、素材、内部構造など複数要素を総合的に確認する必要があります。特に中古購入やフリマ取引を利用する際は、信頼できる鑑定サービスを活用することがリスク回避につながります。
ブランド品だけではない――急増するスニーカー偽物市場

AI真贋鑑定の活躍はブランドバッグや高級腕時計だけにとどまりません。
近年、世界的なスニーカーブームの影響により、プレミアムスニーカー市場は大きく拡大しています。人気モデルの中には定価を大幅に超える価格で取引されるものも珍しくなく、コレクター市場では数十万円から100万円を超えるケースもあります。

こうした高額取引が活発になる一方で、市場には精巧なコピー品も大量に流通しています。
現在では正規販売店だけでなく、二次流通市場やフリマアプリ、オークションサイトなどで購入する人も増えており、真贋確認の重要性はこれまで以上に高まっています。
スニーカーAI鑑定サービス「フェイクバスターズ」の実力

スニーカー市場で注目を集めているのが、AIを活用した真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ」です。
同サービスには日々多くの鑑定依頼が寄せられており、希少モデルや高額コレクションの真贋確認も数多く行われています。
取材現場には100万円を超えるプレミアムスニーカーも持ち込まれており、その市場規模の大きさを改めて実感させられます。

サービスには実物を送付して鑑定する方法と、写真のみで判定するオンライン鑑定の2種類が用意されています。
特にオンライン鑑定は手軽に利用できることから、個人売買前の確認や購入後のチェック目的で利用するユーザーも増えているそうです。

驚くべきことに、同サービスへ持ち込まれる依頼品のうち、およそ30%が偽物であると紹介されました。
これは決して少ない数字ではなく、プレミアムスニーカー市場において偽物リスクが依然として高いことを示しています。
肉眼では見抜けないスニーカーの真贋判定

取材では、本物と偽物のスニーカーを並べた比較検証も行われました。
一見しただけでは違いがほとんど分からず、靴底の色味や細かな仕上げ以外に明確な差異を見つけることは困難です。
近年の高品質コピー品は外観の再現度が非常に高く、一般消費者はもちろん、経験の浅い販売スタッフでも判断が難しいケースが増えています。

AI鑑定では、タグやインソール、縫製、内部構造など複数箇所の画像を撮影し、蓄積されたデータベースと照合します。
その後、人間の鑑定士による最終確認が行われますが、紹介されたシステムの判定精度は非常に高い水準に達しているといいます。

実際の検証では、AIは対象スニーカーを即座に「フェイク」と判定しました。
膨大な画像データを高速処理できることこそ、AI鑑定最大の強みといえるでしょう。

数千件、数万件単位の判定データを瞬時に参照しながら分析できるため、人の目だけでは見逃してしまうような違和感も検出可能になります。
AIが見抜いた本当の違いとは

では、AIはどこを見て偽物と判断したのでしょうか。
まず着目したのはタグ部分です。
印字の位置、余白の取り方、文字の並び、印刷精度など、通常であれば見過ごしてしまうレベルの差異を検出していました。

しかし近年の高品質コピー品はタグまで精巧に再現されているケースも多く、それだけでは十分な判断材料になりません。
そのためAIはさらに細かな構造部分まで分析を進めます。
見落とされがちなインソール裏面

鑑定担当者が特に重要視していたのがインソールの裏面でした。
接着剤の塗布方法や素材の質感、加工状態などは製造工程の違いが現れやすい部分です。
人間が見てもほとんど区別できないレベルであっても、AIは素材表面の特徴や細かなパターンを分析し、本物との違いを見つけ出します。
実際に触って比較すると接着剤の質感や粘着感に違いがあるケースもあり、こうした細部が真贋判定の重要な手掛かりになっています。
まとめ|AI真贋鑑定はブランド市場の新たなスタンダードになるのか
今回紹介されたブランドバッグとスニーカーの事例からも分かるように、コピー品は年々精巧化しており、従来の目視鑑定だけでは対応が難しい時代に入っています。
もちろん最終的な判断には経験豊富な鑑定士の知識が欠かせません。しかしAIが持つ膨大なデータ分析能力と高速処理性能は、人間の鑑定を強力にサポートする存在となっています。
これからブランド品や高額スニーカーを購入する際に意識したいポイント
- 極端に安い価格には注意する
- 信頼できる販売店を利用する
- フリマアプリ購入時は真贋保証の有無を確認する
- 高額商品の場合は鑑定サービスを活用する
- 購入後も付属品や購入履歴を保管しておく
今後は中古ブランド市場やスニーカー市場だけでなく、腕時計、ジュエリー、ラグジュアリーアクセサリーなど、さまざまな分野でAI真贋鑑定の活用が進んでいくでしょう。
本物の価値を正しく守るためにも、AIと人の専門知識を組み合わせた新しい鑑定体制は、これからのラグジュアリー市場に欠かせない存在になりそうです。
ブランドバッグやプレミアムスニーカーの真贋判定は、すでに「経験」だけでなく「データ」の時代へ移行しています。中古市場や個人売買を利用する機会が増えている今だからこそ、購入前・売却前の真贋確認はこれまで以上に重要なプロセスとなっています。